音楽とか文化とか

その時々に考えたことをとりあえずメモしています

放送分野の音楽著作権管理の将来像を考える(2)

次にサンプリング分配について復習してみます。サンプリング分配も、本来あるべき「曲別徴収・曲別分配」の対極にある「妥協点」にすぎないことは、多くの方が思うところです。ただし、本来あるべき姿に持っていくには、昔より安くなったとはいえ、相当のコ…

放送分野の音楽著作権管理の将来像を考える(1)

「包括許諾」と「サンプリング分配」の復習 放送では楽曲が大量に使われます。そのため、音楽著作権の権利処理では、ユニークな方法が採られています。「包括許諾」と「サンプリング分配」です。 まず「包括許諾」の復習からはじめましょう。 著作権法は「専…

米国の演奏権管理事情について整理してみる

7月にこんな記事が出ていました。キャバクラのJASRAC著作権使用料は米国と比べてどうなのかネットで公開されているJASRACの使用料と、米国の大手管理団体・ASCAPおよびBMIの使用料を比較する内容です。ASCAPの料金を把握していないなど、試算内容が早計にす…

ジャズとスタンダードナンバーと

恥ずかしながら、本気でスタジオミュージシャンになりたいなどと夢想していた10代後半のころ、当時はポピュラー音楽の技法を体系的に学ぶ方法も限られていたし、とりあえず軽音楽部(ジャズ研)に所属し、地元のジャズスクールに通いつつ技法を学んだ時期が…

とあるマスターと宮川泰さんと

今から10年ほど前。大阪でとある初老の元ドラム奏者と出会った。彼は大阪城にほど近い京橋で飲食店のマスターをされていたが、店内にはそのマスターがドラマーとして活躍していたころの写真が一杯飾ってあった。番組終了後にスタッフ全員で撮影したようなス…

ウナ・セラ・ディ東京と岩谷時子さんと

昨日から、なぜか「ウナ・セラ・ディ東京」の切ないメロディが頭から離れなくなり、この曲について思いを巡らす週末を過ごした。この曲のファーストレコーディングは1963年。作詞は岩谷時子さん、作曲は宮川泰さん。ずいぶんオトナになってから、このコンビ…

著作権ロイヤリティは「B to C」では回収できないこと

先月の文化審議会著作権小委員会で、汎用ストレージ(クラウド)サービスについて、JASRACなど権利者側が意見を述べた。その際、T氏というインターネットユーザーを代表する委員が、公の立場にあるにもかかわらず、一私人として反対意見を批判的にツイッター…

キャバクラ・ピアノ生演奏事件の判決文を読む

しばらく前にピアノ生演奏していたキャバクラが著作権侵害で訴えられた事件が報道されました。 キャバクラ:生演奏「著作権を侵害」 東京地裁判決(6月26日毎日新聞) 知財事件の判決文は、わりとすぐに最高裁ホームページの知財判例集に掲載されます。この事…

音楽出版社を知る(2)

前回は音楽出版社のアウトラインについて触れました。今回は音楽出版社が著作権者となることが、なぜ音楽業界で一般化したかを考えてみようと思います。音楽作家(作詞家・作曲家など)は通常、創作や演奏、録音といった制作段階までが仕事の領分です。出来…

音楽出版社を知る (1)

一般の方には聞きなれない「音楽出版社」。よく楽譜出版社と混同されるのですが、全く別のものです。音楽出版社は、手短かにいえば、作詞家・作曲家などのパートナーとして、彼らの著作権を管理する、というのが本来の機能です。音楽出版社が一般に分かりに…

人知れず進む文化の衰退-録音コストの漸減について

ブロードバンドとファイル圧縮の技術進歩が、音楽流通の世界にパラダイム・シフトをもたらしたことは間違いありません。そして、無料で情報を享受できるインターネットの世界では、有料サービスがうまく行かないのは、当然の成り行きだったのでしょう。 この…

インターネットの暗黒面「匿名の闇」について

インターネットが多くの人の生活に定着したのは、15年程前ではないかと思います。 私の場合インターネット対応のPCを買ったのが97年。そして99年頃だったか、職場の若手が「MP3(圧縮音楽ファイル)がすごい勢いですよ。CD買う必要無くなっちゃいますね」と…

保護期間70年を考える

TPPで海外から要求されている項目のひとつに、著作権保護期間の延長がある。現行50年を欧米の著作権先進国並みに、70年に延長せよ、という要求である。今日はこれについて考えてみたい。 実は「何のための延長か」という点について、本質的なオピニオンがど…

文化予算から日本を考えてみる

かなり古くなってしまったが、文化庁公式サイトにこんな資料がアップされている。文化関係予算の国際比較英仏の文化予算が日本の数倍にのぼる、というのは、両国のお国柄から推して測れるし、米国は一見少なそうに見えても、税制優遇によって民間からの寄付…

消えゆくマスターテープについて

音楽ソフト2013年年間マーケットレポート、2年ぶり前年比減〜オリコン発表 音楽ソフトの売り上げが右肩下がり、というニュースは珍しくもなくなってしまった。そんな中にもかかわらず、レコード会社などコンテンツメーカーを非難する声があることに、音楽好…

ライブハウスまわりの著作権の基礎を整理してみる(後編)

先週に引き続き、ライブハウスまわりについて話を進めていきます。今日は、一部ではホットになっている2つの問題について基礎を整理していきます。 3 セットリストに自分曲が混じる場合、手続きはどうなるのか 前回、冒頭でお伝えしたように、著作権者への…

ライブハウスまわりの著作権の基礎を整理してみる(前編)

学生時代をすごした町には、ユニークで楽しいライブハウスがたくさんありました。今思えば、非常に恵まれた音楽環境だったと思います。1960~80年代、そこから全国区の音楽家がたくさん出たのも、こういった環境と無縁ではなさそうですね。ライブハウスは、…

囲い込みの得失 ~専有権と報酬請求権~

新しいビジネスモデル、たとえば一昔前なら iTunes や Google といったサービスを始めるにあたり、日本のメーカーやキャリアーなどは「日本は著作権者の力が強すぎて踏み出せない。これでは海外勢に負けてしまう。」と言うことがありました。これについて考…

障壁画と工房から

今年の5月、京都東山七条の智積院に、長谷川等伯の障壁画を見に行って来ました。 収蔵作品|総本山智積院 長谷川等伯一門 国宝障壁画実物のスケール感はインターネットや本で見るのとは大違い。迫力に圧倒されます。長谷川等伯、狩野永徳、俵谷宗達、といっ…

コストを軸にロイヤリティを考えてみる

むかし、とあるジャズミュージシャンが自作曲入りのリーダーアルバムを作った際、著作権をどう管理するかで話をしたことがありました。 そのアルバム、彼から聞いた話をまとめると、とあるプロデューサーが彼の演奏を気に入り、レコーディングから発売までを…

プレイヤー(演奏家)を軸に考えてみる

まず初っ端はプレイヤーを軸に考えてみることにしました。 いきなりコムズカシイ書き出しで恐縮なんですが、まずはギャランティとロイヤリティについて触れたいと思います。 ギャランティ、俗にいう「ギャラ」は一回ポッキリの請負料。それに対しロイヤリテ…

とりあえず私と音楽との関わりあいから

音楽との関わりは、中学3年の折、親にギターを買って貰ったのが始まりでした。高校2年でベースに転向。遅まきながらプロのミュージシャンになりたいなどと無謀な夢を描きましたが、大学3年になる頃に挫折。それからは演奏はあくまで趣味にとどめ置き、音楽業…