音楽とか文化とか

その時々に考えたことをとりあえずメモしています

文化予算から日本を考えてみる

かなり古くなってしまったが、文化庁公式サイトにこんな資料がアップされている。

文化関係予算の国際比較

英仏の文化予算が日本の数倍にのぼる、というのは、両国のお国柄から推して測れるし、米国は一見少なそうに見えても、税制優遇によって民間からの寄付で文化が守られていることは容易に察しがつく。カーネギーホールなどは、鉄鋼業で得られた億万の富が文化に還元されたことが、名前から即座にわかる。

この表で気になったのは、隣国・韓国である。日本の1/4程度の人口しかないこの国は、なんと日本の1.7倍ものおカネを文化に注いでいる。この膨大な予算の背景は、ウィキペディア韓流」にわかりやすく記述されている。ぜひ一度ご参照いただきたい。彼らは深刻な通貨危機に直面し、国策として文化コンテンツの輸出に命運をかけたのである。その果実として、彼の国は、テレビドラマを通じ、我が国の奥様方から、多大なお布施を集めることに成功した。

ちなみに文化予算には大きく二通りある。文化財維持に係る予算と、芸術文化振興に係る予算。日本(つまり文化庁)の文化予算の内訳は、以下のサイトで知ることができる。

国の文化政策

国立美術館運営費等というのは、実質、文化財保護のほうにかなり近いことを考えると、実質的な芸術文化振興予算というのは、たかだか230億円程度であるということがわかる。富士山や和食文化がユネスコ文化遺産に選ばれたのはとても喜ばしいことだが、この程度の予算で、果たして「日本は文化の国」と世界に言えるのだろうか、と落ち込んでしまう。

でも私は、日本の文化コンテンツが大好きだ。小説、映画、音楽、絵画。どの分野にもたくさんのお気に入りがある。これらのすばらしい日の丸コンテンツは、実はほとんど、民間の資力、つまり商業ベースで生み出されているのである。

それは本当にすごいことなのだと思う。娯楽系コンテンツはもちろん、一般受けしないような難しい教養系コンテンツでも、日本にはしっかり愛好者がいて、国に頼ることなく、民間レベルで経済的に支えてきた。非常に高価な学術書でも、ぶつくさ言いながらも、買っては喜んで読むような人が、日本にはまだ結構いるのであろう。世界に誇れるような民度の高さではないか。

知的財産権分野の著名な弁護士であり、一流の文化人でもある福井健策氏が、さきごろこんな論説を出された。

知のインフラ整備とデジタル著作権の挑戦


相変わらずハコモノに予算をかけるより、「日本文化の総カタログ」を、国の威信をかけて作れ、というお説。大いに拍手を送りたい。文化総カタログは、海外のバイヤーには相当便利なしろものである。政府が保証する日本文化の総カタログ。夢のある話ではないか。

モノづくりの生産拠点が日本から移っていく今後、日本は、「すぐれた文化」とか、「豊かな自然」とか、「精緻な技術」とか、「独自の発想力」、そういった「良いイメージ」を海外にどんどんアピールし、「日本ブランド」を確立していく。そんな夢を描けるならば、非常に先々が楽しみになる。福井先生、応援いたします。ぜひ頑張ってください。

最後に。民間ベースで文化を維持していくには、文化産業の担い手たちに、都度払いでギャラを払うだけではやはり成り立たないのだと思う。出来高払い、つまり著作権ロイヤリティによるインセンティブをしっかり維持しないと、担い手のモチベーションが薄れていくし、担い手としての誇りも育たない。国の文化予算は、おそらく一時にドバっと増額することはない。文化コンテンツを買い、出来高払いのお布施を続けることは、大好きな作品の担い手を守り育てるためには、今後も大事なのであろう。

今夜は久々に「となりのトトロ」を見ることにします。この作品に描かれた日本のふるさとの風景。私は日本のみならず世界クオリティの美しさと思うのです。